2011年11月8日火曜日

暴落はなぜ起きるのか

 あけましておめでとうございます。
 新年は、雑学ネタから行きます。

 正月の新聞に、経済物理学者へのインタビュー記事があったのだが、興味深いものだった。
そもそも「経済物理学」という分野なのだが、物理学的な観点から経済を分析する学問という説明だった。

 具体的には、人が集まり社会ができ、人により経済活動が行われるが、人は限定された情報から、個人の要求を満たすために意思決定をしているという前提、つまり、全体は多様な個の集合で出来ている前提がある。
 そして、個の活動や意思決定方法(そのバラツキや多様性も含めて)などミクロの仕組みが解明できれば、その集合体であるマクロの経済の動きも解明できるという仮説に成り立つ学問だ。

 株や債券の暴落のメカニズムであるが、価格が値上がりするほど、空売りなど値下がりによる逆張りで儲けようとする個人が必ず増えてくる。逆張りのパワーのポテンシャルが増大し、あるときのちょっとした衝撃で急激な崩壊が起こるという暴落の仕組みを、物理学的なアプローチから解明しようとしている。

 これによって、株介入など行う場合、逆張りのパワーを利用すれば、少ない額でも大きな影響を与えることができるなど、活用方法もあるようだ。
 株式のテクニカル分析にも根拠を与えたり、あるいは高度化する可能性があるかもしれない。

 しかし、ミクロ(個人)の意思決定の仕組みを理解するということは、人間そのものを理解することだ、そんなに簡単にはいかないだろう。
 これほど経済学やコンピューターによる解析技術が進んでも、サブプライムのような急激な崩壊が防げなかったことからも、実際に有効に活用できようになるには相当年数がかかりそうだ。

この中で特に、興味深い示唆は以下の3つだ。
①全体は個の集合で出来ている
②個(個人)は限定された情報から、個人の願望も含む多様な意思決定している
③価値の評価が上がれば、必ず評価の低下への期待も増えてくる


 これらは、あらゆる思考の前提として持っておくべきことだと思う。
経営にも、個人の活動にも役にたつ。
 最適な意思決定には、個人の多様性を認めて、また人間そのものの理解が重要であるといえる。
 (もっと人間修行しなければ、)

 下世話な教訓としては、最近の芸能人のゴシップをみても、不祥事で、みんな手のひらをかえしたように徹底的なバッシングを受けているが、このメカニズムは当てはまるかもしれない。急激な成功に比例して、失敗に期待する人も急激に増える。そして、少しのミスでも急激に反応して価値評価が暴落している。

 よって、多くの人は、短期的な大きな成功を望むが、得られる価値や効用の最大化を考えるなら、長期的な成功を目指す方がよいだろう。
 また、名実というが、実が伴っていないとどこかで破たんする。やはり王道としては、基礎的要因をしっかり強化していくことが重要であると痛感した。

 私も本来のライフワークである建設産業のベストプラクティスの解明を中心に、実の部分を着実に強化しなければ。

 ということで今年もよろしくお願いします。