調整池というのは、大雨の時に、雨水の河川への大量流出を抑えるための池で、普段は空である。
河川を計画するときに、各地域の利用形態(山岳、山地、市街地、畑)ごとに雨水の流出量の指数である流出係数が決められる。
例えば、山地0.7、市街地0.9とかだ、よって、山地を切り開いて、市街地開発すると、開発地域からの雨水の流出量は単純計算で20%以上増える。
よって、開発側は、河川への影響を抑えるために、開発前の流出量となるように調整池を作ることが義務付けられる。
目的は河川の氾濫防止であるので確率年は、河川計画と合致して50年とか80年に一度の大雨を想定するのだが、そのうちの流出量の20%を調整するためには、数haの開発だと、必要な調整池の容積は巨大になってくる。
具体事例で言えば、横浜北部などは、小学校のグランド位もある調整池がいっぱいです。
一部を公園にしたり当然工夫はしているが、安全上の配慮もあると思うが、やはり、調整池の構造上、大雨の時は水没するので、すべてを利用できるわけでなく、ただコンクリート張りの大きな空堀となっているところも多い。
こうした空間を有効活用について考えてみたい。
水没するのなら、最初から常時湛水(水を湛えて)させて利用できないだろうか。
例えば、30cm位の水深の池にしてしまうのだ。
調整池の排水は、排水塔と呼ばれる塔に小さな穴が空いていて、オリフィス構造になっている。これにより所定量以上の雨水が流出しない仕組みだ。
調整池の穴は、大抵、底から、2、30cm上についている。(ごみ等が詰まりにくくするために)よって、30cmほど湛水させても問題はないだろう。
また、それがだめなら、調整池を下に掘り下げればよい。下に掘り下げる分には調整容量に影響はない(施工コストはかかるが)
そして、池には水草を植え、魚を放し、桟橋式の歩道を周囲につけて、水上庭園やビオトープにしてしまう。あるいは釣り堀や子供が自由に魚取りをできる場所にするのも良いと思う。
ちいさなグランドほどの面積がある調整池も多い。これが水上公園化したら、随分壮観だろう。
新規の用地買収は必要なく、周囲の反対も少なく、工費も少なく、新たな公園施設ができる。メリットとデメリットを整理すると。
メリットとして
①公園そのものによる社会的利益(市民生活の充実や、子供の教育)
②公園が増えることによる地価価値の向上(固定資産税も増える)
③低コストで実施可能(用地買収は必要ない、地元の賛成も得られやすい、簡易な工事ですむ)
費用対効果は大きいだろう。
課題・デメリットとして
①出水時の避難
近年のゲリラ豪雨時などに大量流入があると、水位の急激な上昇の恐れがあるが、その時の避難体制の構築が課題になる。
遠隔監視(カメラ等による)と地域コミュニティの協力は欠かせない。
②ボウフラ対策
地域住民からの苦情の可能性がある。
水質の維持や、メダカ等を安定的に繁殖させる必要がある。
③事故の可能性
水深30cm位とはいえ、事故の可能性はある。
安全対策をどうするか、
④維持管理はどうするのか
清掃や、水質の維持、水草の管理など日常の維持管理をどうするのか
財政への影響を抑えるためには、地域住民の協力が必要だろう。
このアイデアが成功するには、計画段階からの将来の管理担う「住民のコミュニティづくり」がカギになるだろう。
それを踏まえて、企画・調査・計画・設計・施工・維持管理につながる全体工程を統括する必要がある。
これは、建設コンサルタントの得意分野だ。施工規模が小さいのでゼネコンはメリットは少ないと思う。(造園会社にはよいかも)
「建設コンサルタント」にとって新たなビジネスチャンスでもあると思う。
日本全国に該当箇所は、相当数あるだろう。