現在社会の問題として、ワーキングプア―が最近注目されている。
20代で正社員になれなかった人や、中途退社した人が、非正規雇用により、低収入の生活を強いられ、家庭も持てず、将来的に希望をもてない状況にある人がたくさんいる。
日本社会は、一度ドロップアウトすると、復活が難しい社会である。
ここで、30代ワーキングプアからの脱出事例として、とても面白い事例があるので紹介したい。(私の友人の事例です、仮にk氏wとしましょう)
※この記事は本人の承諾を得ました。
大学時代に哲学を専攻していたk氏は、就職する意味を見い出せず、卒業後、そのままフリーターになった。そして、20代、就職せずに、転々とバイトをしながら、気ままに遊びまくっていた。
当然、なんのスキルも社会経験(サラリーマン経験という意味で)もなく、30代を迎えてしまったのだ。
現代社会では、ここから、企業の正社員になって、普通の収入を稼ぐのは、かなり難しいだろう。
k氏は、彼女と同棲しており、田舎の親も高齢になり、いよいよ将来を本気に考える必要がでてきた。
そして、k氏が選んだ道は、鍼灸・マッサージ師になるということだったようだ。
��本人は、悩んでいてあるとき突然ひらめいた「神の啓示」だと、アホなことを言っているが)
鍼灸、マッサージ師というのは、国家資格で、3~4年も学校に通わないと取得できない。
k氏は、昼間は東京の鍼灸・マッサージの有名店で働き、夜は夜学に通うという生活を4年続けた。資格が無いので、店でやれることは限定されるだろうが、OJTとOFFJTの理想的な組み合わせだろう。
今までのフリーター生活は嘘のように、朝から晩まで、「東洋医学」漬だったわけだ。
そして4年後、無事、資格を取得し、今度は、地方のカリスマ治療院のもとで、住み込みで3年修行した。給与は25万以上貰えたということで、雇われ鍼灸師にしては条件は良い方だと思う。
その後、一昨年より、実家の松本市で鍼灸・マッサージの治療院を開業している。
元々、経営の知識はほとんどないため、開業後、県の支援センターの専門家として、私が経営指導している。
そのお陰かどうかは別として、開業当初は月収10万程度で、アルバイトをしていたが、現在は、普通のサラリーマン以上の収入はある。
が、個人事業というのは、年金、保険自分持ち、退職金もない、将来の年金も少ない(国民年金)、収入の保障もないことを考えると、収入という点では会社員+αがないと割に合わないから、収入的には成功したとはいえない。
しかし、上司にぺこぺこしなくてよく、通勤もなく、家族に囲まれ、客に感謝されて・・・・・などなど、地に足がついた生活をしていることを考えると、ワーキングプア―からの脱出事例と言えると思う。
将来的には、それなりに稼ぐことができる余地があるが、本人にその意思があまりなく、低収入な人、障害で寝たきりの人などへの施術を中心にやっていきたいとのことで、現在は、k氏のファイナンシャルプラン(子供の教育費や家の建替え)などを考慮したうえで、希望をかなえる経営支援をしている。
ちなみに、鍼灸治療院経営は、独立し成功できる人はごくわずからしい。
その要因として
①k氏いわく「サラリーマンをしながら学校(夜学)に通うなど、覚悟が足りない、学校を卒業して、すぐに、独立できると思っている人が多い。また、将来の希望や適性も固まらない若者が、なんとなく手に職をつける気分できても続かない」ということだ。
確かに学校に通うだけなら、教わったことはどんどん忘れるし、生きた技術も身につかない、昼間は治療院で働き、夜は夜学の人とは、卒業時に格段の差がつくだろう。
k氏は、独立までに、学習+実務で7年間、2万時間近くに達している。以前に書いた「時間の戦略」から言っても、技術は相当なレベルだと思うし、事実リピータが多い。
��東洋医学は、あまり信じていなかったが、施術をやってもらったら、しつこい咳が治ったので、効果はあるようだ)
②補足として私の意見
支援に当たって、競合などいろいろ調査したのだが、開業する人は経営の知識、特にマーケティングが弱点になっている。腕さえ良ければ、看板掲げて顧客がくると思っている人が多いと思う。
法的には、広告内容にもかなり厳しい規制があるが、その範囲でもやれることはあるが、あまりやっていない。
(だからこの記事をみて、安易に鍼灸とか感違いしないようにお願いします)
終わりに
20代~30代前半は、さんざん遊んで、今また、仕事も家庭も充実している友人(k氏)をみると、労働と苦悩の20代だった自分としては、少々面白くない気もするので、飲んだ時には、いつもそのことでからかっているのだが、本人いわく、「20代のフリーター時代は精神的につらかった、鍼灸修行時代の方が、大変だが、はるかに楽しかった」らしい。