2011年11月8日火曜日

原発の安全性を高めるには

 今回の事故を受けて、反原発の動きが高まっている。
 海外では、ドイツでは脱原発、フランスでは必要性は認めつつ再検討という流れのようだ。
 今回は、原発の安全性について考察してみたい。

 まず、今回の事故で、「原発事故が起こらないようにする」ことと同じくらい、「原発事故が起こってしまった場合に、被害を最小化する」ことが、重要であることがわかった。
 人間の思考の範囲では、すべてのリスクを想定できないし、希望的な観測も入り込む余地も大きいからだ。
今までのように、「絶対に事故は起こりません!キリッ」で、事故が起これば「想定外です」では、日本の原発はすべて廃止するしかないだろう。

 最初に気になる点が、今回の事故炉が、40年前に建設されたものである点だ、現代の最新炉との安全性の違いは、どの程度あるのだろうか。

 現代の最新炉は、部品点数も少なく、構造もシンプルで壊れにくく、また、事故が起こっても、電源や動力に頼らず、自重や人力などで、冷却装置などが勝手に作動する冗長性の高い構造(フィルセーフというのか?)であると聞いていたのだが、現代の最新炉だったら事故は防げていたのだろうか?

 原発廃止の是非など今後の電力政策を考える上で、原発の安全性を再検証する必要があると思う。
個人的には、現実問題として、他のエネルギーでまかなうには、まだまだ、技術的なブレークスルーが必要だと思う。
 
 自分は原発推進派ではないが、もし、事故発生後の対応強化により今回のような破滅的な事故が防ぎ、飛躍的に安全性を高める方法があるのなら、当面は仕方がないのかもしれない。

ここで、素人考えだが、想定外の事故が発生したあと、破滅的な被害を防ぐアイデアを考えてみると

①原子炉は地下・半地下に造る
原子炉をあらかじめ地下に作ってしまえば、どうしようも無いときは、水を投入すれば、原子炉は水没し水棺になる。また津波がくれば勝手に海水で水棺になる。
原子力空母や原潜が、最後の手段として、船底の栓を抜く(隔室になっているので沈没はしない)のと同じことを陸上でもやれる。
既存の原子炉は、建屋の回りにコンクリの壁を作ってその外側に盛土すれば、半地下構造にできる。

②真水のタンクを原子炉近くに設置
 海水投入=廃炉による損失があるため、意思決定が遅れる。真水のストックがあれば、注水をためらうこともなく、また、損失も回避できる。
断面が円で直径30m、深さ30mのタンク1個で2万t以上貯水できる。日本の建設技術なら朝飯前だ。
 原子炉より標高の高い位置に地下式にして複数個作っておく、事故時に最悪は自重でも注水できるようにしておく。

③使用済み燃料棒は地下に保管
原子炉の上に、使用済み燃料棒が保管してあったことに驚いたが、まるでストーブの上に燃料タンクがあるみたいで恐ろしい。取り扱いの際の手間や安全を考えてのことだろうが、事故の発生を全く考慮していなかったのが良くわかる。

④機動性
 今回は、津波からメルトダウン、水素爆発までに1日以上の間があったが、その間に機動性を発揮できていなかった。
 水素爆発で放射性物質が拡散したし、爆発で施設の配管、配線、機器が破損したために今の復旧もままならない状況になっていると思う。
そうなる前、 発電機や燃料タンクなど、各地方ごと安全な集積地を造っておいて、事故時に自衛隊の輸送ヘリで空輸する仕組みが予めあれば、数時間以内になんとかできたかもしれない

⑤サプライチェーン
 原発の管理体制が、本社、関連会社、下請け、孫請け、一人請け負い、あるいはメーカーといった形で極端に重層化している。
 危険と低単価を、下請けに押し付けるのはどこの産業も似たようなものだが、原発のようなハイリスクなものは、こうした体制ではだめだろう。まるで足軽、地侍、国人、旗本など、寄せ集めの封建時代の軍隊みたいで、意思決定も遅く、能力やモチベーションレベルに大きなばらつきがあり、安全性が確保できるとは思えない。
 多少コストが上がっても、もっと統合した仕組みが必要だろう。

最後に
 今回、冷却装置や除去装置プラントになぜこれほど時間がかかるのだろうか?
 汎用機を大量に並べて並列処理すれば、すぐ稼動できるとおもうのだが、例えば、業務用の浸透膜浄水機を100台並べて並列処理すれば1日で相当量処理できる。どこまで放射性物質を除去できるのかは不明だが、少なくともプラントが間に合わず、そのまま海に垂れ流しにするよりはよいと思うのだが。
��膜交換作業時の安全性の問題?)

 冷却装置でも、運搬可能な、オフィスビルで使うクーリングタワーや、冷温水器、または冷蔵船など配列処理して冷水を大量に作ることもできると思うのだが、不可能なのだろうか?